埼玉県の167の地名、由来を解説 志木市の神山さん

 志木市在住の郷土史家・神山健吉さん(83)が、新座、志木、朝霞、和光の4市で使われている167の地名の由来を解説した「埼玉の地名」を25日から発売する。神山さんは志木市を中心に県内の郷土史研究を長年続けており、「地名の由来を調べることは地域の歴史を知ること。教育現場で本を活用してもらいたい」と話している。

 掲載される地名の由来解説は、朝霞地区4市で発行する地域紙「スマイルよみうり」で1999年から今年12月5日まで月に1回のペースで連載された神山さんの記事を加筆・修正したもの。現在の朝霞地区と東京都西東京市保谷地区、練馬区大泉町にあたる新羅郡の設置や変遷の解説から始まり、4市の大字、小字、地域のみで呼ばれる通称の地名など、各1ページずつ、由来や諸説を分かりやすくつづっている。

 例えば「新座市石神」については、「(石器時代に)石棒や石剣を神としてまつった場所だった」などとし、志木市で「芋頭(いもがしら)」と呼ばれる地域については、貧しさに苦しむ農民が川から流れてきた三つの芋を見つけた場所との言い伝えを紹介している。

 神山さんは戦時中に東京・神田から母・千代さんの生まれ故郷だった現在の志木市に移り住んで70年近くになり、「3人の子供を裁縫の仕事で育てた母に感謝し、母の古里を調べたい」という思いから、新聞社に勤めていた1972年に市内の農家などに残る古い文献などの保全を目的に「郷土史研究会」を発足し、地域の歴史を調べるようになった。

 文献などを調べる一方で、各地域の高齢者らを訪ね、地名などの由来を聞いて回った。「昔は親が子に地域の歴史を伝えているが、今はそういった習慣はほとんどない。自分の目で見て、聞いた人たちの話は貴重な資料であり、地名の由来を後世に伝えることは、子供たちに自分たちが暮らす古里への愛着を持ってもらうことにつながるはず」と信じている。


刷り上ったばかりの「埼玉の地名」を手にする神山さん

 「埼玉の地名」は県内の書店で販売される。問い合わせは出版元の「さきたま出版会」(048・822・1223)へ。


(読売新聞より転載)


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