2014年新年より、東京外国語大学に在籍している菅井健太さんから、ブルガリア語の研究・調査で折に触れ体験したエピソードをシリーズで寄稿いただくことになりました。

 筆者は、大学院でブルガリア語を研究しています。もともと学部時代にはロシア語を専攻していたのですが、ロシア語を含むスラヴ諸語を色々と勉強する過程で、スラヴ諸語全体に惹かれるようになっていきました。同じくスラヴ諸語の一員であるブルガリア語は、ほかのスラヴ諸語と比べて、文法の面で面白いところがあり、筆者の心をより一層惹きつけました。そんな中、大学院で専門に勉強するようになって、ある学術論文を読んでいるときに、ルーマニア・ブカレスト近郊に住むブルガリア人とその方言について知り、興味を抱きました。彼らは200年近くも前にドナウ川を越えてルーマニアに移住した人々なのです。話者はルーマニア語とのバイリンガルであり、両言語をおおよそ自由に使いこなします。ただし、彼らの話すブルガリア語は,彼らが移住する前に住んでいた土地の方言が基盤となり、それに加えてルーマニア語の影響を受けており、標準ブルガリア語とは幾分異なった様相を呈しています。筆者は、彼らの方言を研究しようと決意しました。がしかし、研究するにあたっては、その素材となる方言資料を得なければなりません。というわけで、それらの方言が話されている村に直接行ってみることにしました。

 このコラムでこれから語ることは、日本で大学院生として暮らす筆者が、言語調査のために訪れた(そしてこれから訪れる)先々での「ブルガリア人」との出会いや交流について気ままに述べたものです。

筆者プロフィール
東京外国語大学大学院博士後期課程スラヴ語学専攻
東京外国語大学(TUFS)オープンアカデミー講師(ブルガリア語)



『ブルガリア語方言話者を訪ねて』
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その1 『ルーマニアの村への初訪問』
その2 『ルーマニアの村への初訪問』(続き)

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