「私は世界地図、日本はわきの下」 中東欧、占い脚光(3/3ページ)

2009年6月20日アサヒ・コム

世界地図を手に、地震が起きる場所と体の痛みとの関係を説明するマヤ・ポポーバさん=ソフィアで、玉川写す
パソコンを使って、受講者たちにホロスコープの見方を解説するコルチェマロシュ・マグダ教授(左手前)=ブダペストで、玉川写す

  

 受講5年目のガブリエラさん(41)は、経済危機のあおりで夫の投資会社が破産寸前に追い込まれた。「人生には困難がつきもの。だからこそ心を強く保ちたい。占星術はそのための道具なんです」

■霊能者や占師、隆盛繰り返す

 中東欧では、霊能者や占師が活躍した歴史がある。

 89年に崩壊したルーマニアのチャウシェスク独裁政権で権力をふるったエレナ大統領夫人が、何事も占師ママ・オミダに相談して決めていた話は今でも語りぐさだ。

 「神に祈るより、占いや予言に救いを求めた」。ブルガリアの大手紙で占いや予言を取材するガルバロバ記者は、共産主義政権下で宗教活動が制約された人びとの心情をこう読み解く。冷戦終結後も、社会情勢が厳しさを増すたびに隆盛を繰り返してきた。

 一部の国が欧州連合(EU)に加盟し、西欧資本が大量に流れ込んだ中東欧の新興国は、急速な経済成長を遂げていた矢先、世界的な金融危機によって資本が一気に引き上げられ苦境に立たされた。

 EUの統計機関の予測によると、09年の実質国内総生産(GDP)成長率は、バルト3国では10%超のマイナスで、ハンガリーは6.3%減、ルーマニア4%減。失業率もハンガリーで2〜4月に9.9%と13年ぶりの高い値を記録した。ルーマニアは昨年5月の3.7%から1年で5.8%に悪化。ブルガリアでも4月に7%を超えた。

 「誰かに救われたいという人びとの心が、経済危機で再燃したのではないか」と、ガルバロバ氏は分析する。

 ただ、占い業界にとっても経済危機はよいことばかりではない。ルーマニアのママ・オミダの娘で、人気占師のチェレシカさん(44)は、四つあった事務所のうち二つを閉めた。経済危機直後、客が殺到したが、暗い見通しばかりの占いに客足が激減した。兄ソーリンさん(45)は「占いだからって耳あたりのいいことばかり言えない」とぼやいた。(ソフィア=玉川透)





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