記事拾い読み
「ブルガリアの生活」

収納部屋の上に家
すべてお願い地下倉庫
パルノの支払い、どうなるの?
トイレまで水浸しのバスルーム
路上駐車の大名行列
ブルガリアの試み 子供を肥満から守れ ヨーグルト回帰 
ブルガリアで部屋探し!
リビングは食事をする部屋
「私は世界地図、日本はわきの下」中東欧、占い脚光
ブルガリアのヨーグルト復活 不況「安くて健康に良い」
ヨーグルト:生活に密着・ブルガリアを訪ねて
美人と長寿を生む 伝統のヨーグルト
ヨーグルトと生きる
キッチンはバルコニーに

目次ページへ 表紙へ



収納部屋の上に家

2011年6月15日筆者 ブルガリア・早坂由美子
アサヒ・コム


マカリオポルスキ邸マザ入り口の頑丈な扉


マカリオポルスキ邸マザ内部

 ブルガリアでは収納部屋のことを「マザ」という。通常、1階か半地下・地下にあるもので、大きさはさまざま。集合住宅では地下に戸数分のマザが設けられているのが一般的である。

 今回お話しするのは、ブルガリア古民家のマザ。19世紀末からの近代化以前


古民家のマザにある焼き釜

元はマザの入り口だった玄関扉

に建てられた古い家々では、居住階とマザの階が分けられ、入り口も分かれている。マザが1階で居住スペースは2階より上というのが決まりごとで、2階へは外階段で直接上る。大きな屋敷ともなれば、マザは収納部屋というよりも倉庫と呼ぶのがふさわしい広さになる。

 ブルガリア中央部にあるエレナという町のマカリオポルスキ邸を紹介しよう。町の要職や教会聖職者を輩出した名家で、屋敷は1710年ごろの庭付き一戸建てである。例にもれず、1階のすべてがマザである。現在は博物館として公開されているのでマザ部分は展示スペースになっているが、もとは作業場を兼ねた倉庫で、いくつもの部屋に仕切られている。床と壁は石造で天井は木造である。つまり、石造の倉庫部分に木造の居住部分がのっているという面白い構造になっている。これは、ブルガリアではごく一般的な古民家の形態だ。

マザは食料の貯蔵、農具置き場などに使われ、家畜を入れることもあった。家畜を入れると2階の居住部分を温かく保てるという古い時代の知恵である。簡単な農作業など、日本の土間のように日常の作業場としても使われており、収納、納屋、作業場、家畜小屋などを兼ねた多目的な巨大収納部屋が古民家のマザだと言える。別の屋敷では大きな焼き釜が付いているマザも見たことがある。きっとパンを焼いたのだろう。



 今日では、このマザ部分を改築して居住スペースとしている家もみられる。今では農具を家に置くこともなく、家畜もいないので、余ったスペースを有効活用ということだろう。居住部分と旧マザ部分では別の家族が住んでいることも珍しくなく、別々に売りに出されていることもある。しかし、普通の古い家の場合、マザの戸は小さめに作られていることも多いので出入りがやや不便そうではあるが、小さな戸の佇まいはどこか愛らしく、マザであった時代を思い出させるのである。


ページトップへ



すべてお願い地下倉庫

2011年5月15日筆者 ブルガリア・早坂由美子
アサヒ・コム


れんがづくりの壁の間に並ぶ典型的な地下室の物置


普段は訪れる人のない不気味な地下に潜む共用の倉庫

 収納や整理整頓についての話題となると、きまってドイツの人たちの奇麗な暮らしぶりが引き合いに出されることが多いようだ。それは身だしなみなどの清潔さというより、住まいや執務空間で見受けられる秩序立てられたしつらえなどから、つねに端正で理路整然としているという印象を受けるからだろう。

 これまでのドイツでの生活を振り返ってみても、彼らの整頓能力には何ども感心させられてきた。普段は、ややだらしなく思えるような友人であっても、家の中は丁寧に片付けられているし、職場も机の上から書類の管理にいたるまで、あらゆるものが奇麗にまとめられている。


1880年代に建てられた住宅の地下にある木製の簡易物置
2008年に完成した集合住宅の奇麗な地下倉庫

 それには子供の頃からの躾も大いに関係していると思うが、一つ絶対に忘れてならないのは、地下室の存在であろう。これを抜きにしてドイツの収納は語れない。戸建てや集合住宅だけでなく、事務所建築にも収納用の地下倉庫が設けられている。つまり、普段使わないものは、すべて地下室が引き受けているのである。

 生活の中心には必要最小限度のものだけを置いて、空間をできるだけ広く使う。ドイツの家の中にものが少なく、つねに整頓されているように見えるのは、何でも詰め込んでおける地下倉庫があるお陰なのだ。友人の多くが言う。「段ボール箱や読まなくなった本、片付かないものや、すぐに捨てられないものは、すべて地下室行きだよ」

 すてきな住まい方をしているお宅に招待され、奇麗な部屋を見せてもらったあとに、地下室の話をするのは避けた方がよいかもしれない。苦笑いする人もいれば、手のひらを向けて、「降参」というしぐさをする人もいる。「それは聞かないでくれ」ということだろう。つねに整理された住まいを維持し続けるためには、それを支える陰の部分が地下に隠されているのだ。

 実は私が住む集合住宅にも地下室が存在する。建てられたのが1880年代と聞いているから、築130年くらいだろうか。ここには木で囲った3畳くらいの物置が四つあり、各入居者が使えるようになっている。大きくはないけれど、独特の湿気さえ気にしなければ、何でも引き受けてくれるから実に便利である。

 いつだったか友人の実家の地下倉庫を一度見せてもらったら、彼の祖父母が使っていたと思われる数世代前の化石のような代物がうずたかく積まれていた。「これを一体誰が片付けるのかが問題だ」と友人は嘆く。だから、すべてのものを受け入れてしまう地下倉庫を開かずの間にしておきたいという人も、もしかしたらたくさんいるのかもしれない。

 ドイツの地下室はもはや、収納の「裏ワザ」ならぬ、「裏側」そのものだと思うのである。


ページトップへ


パルノの支払い、どうなるの?

筆者 ブルガリア・早坂由美子
2011年3月2日アサヒ・コム

壁に備え付けのパルノ 洗濯物を干すのにもよい感じ 毎月やってくる恐ろしい請求書

 ブルガリアの家に住んでいて困ることといえば、一番に思い浮かぶのは暖房に関するものである。

 ブルガリア語で「パルノ」と呼ばれる、パイプに温水を流すタイプのもので、それが各部屋とバスルームの壁に設置されている。ブルガリアだけではなくヨーロッパに広く見られるタイプの暖房で、とても暖かく部屋の中もあまり乾燥しない上に、室内の温度を一定に保っておくことができる。洗濯物をかけておくとすぐに乾くので冬場はとても重宝する。

 しかしこのパルノには、色々な問題がある。第一に、エアコンやストーブのように自分で好きなときにスイッチを入れることができない。パルノは市内一斉に入るようになっており、少々寒くても待つ以外にない。何月何日から始まるという知らせもなく、「気温が10度を下回る日が3日続くとパルノが入る」という説が一般的だが、真偽のほどは定かではない。10月に入ると10度を下回る日も出てくるが、なかなか3日は続かないので、10度前後の日々を暖房なしで過ごすという辛抱の期間が毎年やってくる。始まったという知らせもないので、自分の家のパルノをつけてみたり、知人から聞いたり、レストランなど出先で気付いたりする。パルノをつけてみて、お湯のやってくる音を聞くときの幸せといったらない。

 パルノの二つ目の問題点は、料金が高いことである。100平米前後の家になると、一番寒い時期で月に約300レヴァ(約1万8千円)の請求がくる。わが家は40平米のワンルームだが、それでも90レヴァ(約5千円)ほどになる。ブルガリアの年金は月額1万2千円程度なので、年金生活者は払えないということになってしまう。事実、ローンを組まないと暖房代が払いきれないということも珍しくない。電気代はこれとは別に請求されるので、家計の負担はかなり厳しい。

 ところが、パルノは大体のバランスで請求をしているので、6月ぐらいになると実際にどれだけ使ったかという点検が来て、最終的な決算をし、家庭によっては追加料金が課されたり、払い戻しがあったりする。人々はそこでまた一喜一憂する。

 最近では、エアコンなど他の暖房手段を選ぶ人も増えているが、やはり部屋全体の暖かさを維持できるパルノというのは魅力的なものである。

ページトップへ


トイレまで水浸しのバスルーム

筆者 ブルガリア・早坂由美子
2011年1月15日アサヒ・コム

バスタブのない我が家のバスルーム

一見普通のトイレだが、ふたがすっぽりと便座を覆う

 わが家のお風呂にはバスタブがない。ブルガリアではバスタブのある家のほうが少なく、ほとんどがバスタブなしのお風呂タイムを過ごしている。

 首都ソフィアの冬は時にマイナス20度に達するほど寒く、実は隠れた温泉大国でもあるブルガリアだが、バスタブのある家庭はごくまれというのが実情である。

 特に集合住宅のバスルームは、最初からバスタブを置くスペースを考慮せずに設計されていることが多く、後から設置しようと思っても難しい。

 トイレ、洗面台とセットになっている場合、壁にシャワーがついているだけで、日本のようなバスタブもシャワーカーテンもないので、シャワーを浴びるとバスルーム全体が水浸しになる。それどころかシャワーのお湯がトイレに直接かかってしまうというのが、ここではごく普通である。

 そのためか、トイレのふたは便座をすっぽり覆う形のものが一般的で、シャワーを浴びたあとでも便座はぬれない。トイレの使用に問題がなければいいのでは、という考え方らしい。

 最近ではシャワーボックスを使う人も増えている。1メートル四方のボックスにシャワーがついていて、これは扉が閉まるので周囲が水浸しにならずに済む。しかし、ボックスなのでやや閉塞(へいそく)感がある点は否めない。わが家のような水浸し型のバスルームは、狭いながらもシャワーを浴びているときに開放感があるので、慣れてしまうとわりと心地よく使える。バスルームが狭い場合、このようにバスタブが無いほうが意外と快適に使えるのかもしれない。

 水浸しになったバスルームはどうするかというと、水を吸い込む強力なスポンジが先についたモップを使ってさっと片付けてしまうか、放っておいてサンダルで歩くかのいずれかである。わが家は後者なのだが、冬季は24時間床暖房が入っているので、わりと早く乾いてくれる。

 床暖房がなくても、パイプに温水を巡らせた「パルノ」と呼ばれる暖房装置がバスルームの壁についているのが一般的である。ブルガリアのバスルームは冬の間このように常時温かいので、もしかしたらそのおかげで湯船を必要としないのかもしれない。

ページトップへ


路上駐車の大名行列

2010年12月11日アサヒ・コム


わが家のある通り 車がずらり


歩道も大変なことになっている


まだまだ珍しい青空駐車場

 わが家の周りにも困ったご近所さんというのが居る。わが家の周辺だけではなく、街のあらゆるところに居るのだが、実は人ではなく、それは車と歩道である。

 ブルガリアの首都ソフィアには基本的に駐車場が足りない。私の住んでいる集合住宅は築一年と最近建てられたものなので、地下に自走式駐車場を備えているが、ほとんどの集合住宅には全戸分の駐車場が無いばかりか、時にはひとつも無いことも珍しくない。

 では皆どこに車を止めるかというと、もちろん自宅付近の路上になる。

 そういうわけで、ソフィアはどこの道も路上駐車で溢れかえっている。中心部は旧市街なので道が細く、ほとんどが一方通行だが、その細い道の片側に隙間なく車が止まっている。時には車が歩道に止まっており、歩行者は車道に出て迂回しなければならないこともしばしばで、すでに歩道がその役割を果たしていないのである。

 旧市街を占める集合住宅は、大きく分けると大規模、中規模、一軒家風の3つ。大通りに面している大規模集合住宅ならば、中庭が駐車スペースになるので問題はない。一軒家風住宅も敷地内に駐車できるのでだいじょうぶ。

 だが、直接、通りに面している中規模集合住宅には中庭もなく、駐車スペースがない。うちのご近所はみな中規模なので、最も厄介なエリアと言える。近年のマイカー所持者の増加に街がついていけないのである。

 ひとつ不思議なことがある。それは、この横行する路上駐車が取り締まられず、かつ無料の区域と有料の区域が中心部に並存していることである。そしてもっと不思議なのは、駐車数が微妙にバランスを保っていて、みな目的地で路上駐車できることである。

 うちのご近所さんもうまくやっているらしく、決まった場所がないにも関わらず、場所の取り合いにはならない。

 この車がすべて通りから消えたら、街はどんなにすっきりと歩きやすくなるだろうと思うのだが、まだ問題が残る。

 それは歩道である。ソフィアの歩道はメンテナンスが十分に行き届いていないので、凸凹が激しく、舗装も欠けているので実に歩きづらく、靴もだめになるのが早い。住宅の建て替えや改装があれば、面している歩道を同時に直すことが多いのだが、それだけを待つわけにはいかないのである。

 そういうわけで、ソフィアに住んでいると、日本の月極駐車場と平らな歩道が夢のように思い出されるのである。

ページトップへ



ブルガリアの試み 子供を肥満から守れ ヨーグルト回帰 (1/3ページ)

2010.8.2

マリア・レシノバちゃん(左)と母・スネジャさんは、市場でおやつのヨーグルトを購入後、一緒に食べる果物も買った =ブルガリア・ソフィア市内
 マリア・レシノバちゃん(左)と母・スネジャさんは、市場でおやつのヨーグルトを購入後、一緒に食べる果物も買った =ブルガリア・ソフィア市内

 豊かな食生活による子供の肥満が問題化する中、欧州委員会が学校の食生活改善に取り組むなど、EU(欧州連合)では対策が広がっている。東欧のブルガリアでは昨年、学校の売店からジャンクフードを完全に追放し、肥満対策を本格化させた。果たして子供の食生活に変化の兆しはあるのか。現地で取材した。(津川綾子)

                   ◇

 ◆売店での販売禁止

「以前はチョコやチップスがおやつだったけれど、今は健康に良いヨーグルトとミューズリー(シリアル食品)が好き」

 ブルガリアの首都ソフィアにある第32総合学校5年のマリア・レシノバちゃん(11)が選ぶおやつは、昨年からこんなふうに変わった。

 ブルガリア保健省は昨年7月、保健大臣による「生徒たちの健康的な食生活に関する命令」を発令。全国の小・中・高校の売店でケーキやクリーム入りのお菓子、炭酸飲料などの販売を禁じた。代わりに売店には、健康に良いとされる野菜入りサンドイッチや低脂肪ヨーグルトなどが置かれるようになった。

 「もちろん娘は嫌がったが、親には歓迎すべき取り組み。いくら『体に良くない』と注意しても、学校の売店でジャンクフードを買っていたから」とマリアちゃんの母、スネジャさん(35)は胸をなでおろす。



ブルガリアの試み 子供を肥満から守れ ヨーグルト回帰(2/3ページ)

ブレジチカ幼稚園の朝食には、ヨーグルトなど乳製品が必ずつく。健康的な食生活による肥満防止が狙いだ =ブルガリア・ソフィア市内
ブレジチカ幼稚園の朝食には、ヨーグルトなど乳製品が必ずつく。健康的な食生活による肥満防止が狙いだ =ブルガリア・ソフィア市内
 ジャンクフード禁止に踏み切ったのは深刻な子供の肥満を防ぐためだ。ブルガリアの小学1年生(184校、3900人)の体重調査(2008年)では、30・6%が肥満で、重度肥満の割合は10年前より倍増。ブルガリア保健省のマーシャ・ガブリロワ公衆衛生部長は「学校が健康的な食習慣の手本を見せるべきだ」と禁止令の狙いを語る。

 ◆体を作る大切な時期

肥満拡大の背景にあるのは89年の民主化以降、ファストフード店進出などによる食生活の“欧米化”だった。今や「アイリャン」と呼ばれるヨーグルト飲料より、甘い炭酸飲料を好む子は少なくない。

 「ヨーグルトは好き。けれどコーラやジュースがもっと好き」。ソフィア市内のブレジチカ幼稚園で、クリスチャン君(5)が口の周りをヨーグルトだらけにしながら話した。

 幼稚園では登園後、園児が朝食を取る。この日は約60人がパンと150グラムのヨーグルトを食べた。「他園ではジュースを飲ませる例もあるが、私は甘い炭酸飲料は与えない。体を作る大切な時期だからヨーグルトや牛乳など良いものを与えます」とハルバリエバ・イバンカ園長。野外活動の水筒の中身もヨーグルト飲料「アイリャン」だ。

 保健省による“ジャンクフード禁止令”が対象としない幼稚園でも肥満対策は定着し、教育現場の意識は高い。


ブルガリアの試み 子供を肥満から守れ ヨーグルト回帰(3/3ページ)

 ただ、思春期の子供への浸透はこれからだ。ニコラ・コルチェフ鉄道交通職業高校(ソフィア)を訪ねると、トイレの床に大きな炭酸飲料のペットボトルが転がっていた。「ジャンクフードを校内に持ち込んでも罰則はない。取り組みは始まったばかり。体に良くないと根気よく説くまで」とウルシア・バシレバ教諭は話しながらペットボトルをゴミ箱に捨てた。

                   ◇

【用語解説】ブルガリア共和国

 ヨーロッパ南東部、バルカン半島の国。首都はソフィア、人口758万人。国土は日本の約3分の1で、言語はブルガリア語。バラの精油が世界的に人気だ。

 ヨーグルトは伝統食品で、ブルガリア最古の民族である古代トラキア人がヨーグルトを作っていたことが分かっている。1人当たりの年間消費量は日本人の6倍以上といわれる。そのまま食べるだけでなく、ヨーグルトを使った冷製スープ「タラトール」など料理の食材でもある。

ページトップへ



ブルガリアで部屋探し!

2010年3月20日アサヒ・コム

写真
部屋は東向きで明るい
写真
モダンなシステムキッチン
写真
解放感のあるテラス

 昨秋から3年ぶりにブルガリアに住むことになり、首都ソフィアで部屋を探すことになった。

 ブルガリアでは、www.imot.bgという不動産検索サイトが最も有名で使い勝手がよい。ブルガリア全土を網羅しており、詳細な検索ができる。住宅に限らずガレージや倉庫、店舗、土地など、あらゆる不動産を検索することができ、なんとルームメイトも探せる優れものである。

 そこで私が選んだのはワンルーム40平方メートルの家具付き物件。仲介業者と待ち合わせ、物件へ。大家と顔合わせをしながら、部屋を見て借りるかどうかを決める。ブルガリアでは、借りた後の家賃や光熱費の支払いなどは大家と直接やりとりしていくので、大家との相性が大事になる。細かい打ち合わせをして同意したら、契約書を作り、かぎをもらってあとは引っ越すだけだ。

 実は、外国での部屋探しは家具付きであることがとても大事なのだ。今回の滞在は2年間の予定だが、たった2年のために家具一式をそろえるのはやはりもったいない。そろえたとしても日本へ持って帰ることもできない。私の部屋の場合は、ベッド、テーブル、棚、洗濯機などの大型家具・家電がすべてついていたので、日本から持ってきたスーツケース二つで引っ越しはほぼ完了。また、とても優しい大家さんが色々と気遣ってくれ、じゅうたんやテラスのテーブルセット、掃除機まで買いそろえてくれた。

 新築物件なのでこの程度だが、ブルガリアの家具付きアパートメントは、食器から掃除用具などの日用品まですべてそろっており、何も買い足すことなく生活を始められるようになっているところが多い。家賃も様々で、中心部から離れた安く豪華な部屋もあれば、中程度の家賃でそれなりの家具といった場合もある。また、私のような外国人だけではなく、ブルガリアでも仕事や学業のために単身引っ越しする人は、家具付きの部屋を選ぶ傾向にあり、間借りの下宿生活をすることも多い。実際、遊びに行く友達の部屋はみんな家具付き物件なのである。ブルガリアで大きなトラックが来て引っ越しをするという日本のような光景がほとんど見られないのは、この理由によるのかもしれない。















ページトップへ


リビングは食事をする部屋

2010年1月16日アサヒ・コム

写真
マリナさん宅の食卓。窓際は昔バルコニーだった。
写真
電子レンジと並ぶテレビ
写真
ステフカさん宅の食卓
写真
食卓と向き合うキッチン



 「リビング」と聞いて思い浮かべるのは、家族みんなが何となく集まってきてくつろいだり、お客様があるときに迎えたりする空間だと思う。近年の日本のマンションは2LDKや3LDKという間取りが標準的だが、社会主義時代に建てられた集合住宅の団地に住む人が多いブルガリアでは、日本のようなリビングがない間取りも結構ある。その場合、みんなが集まる場所はダイニングになることが多い。

 ヴェリコタルノヴォの集合住宅団地に住むマリナさんの家にお邪魔してみよう。

 マリナさんの家は2DK。マリナさん夫婦と子供、マリナさんの母の4人家族である。2部屋は彼らの寝室兼書斎として使われているので、家族が集まる場所は自然とダイニングになっている。ダイニングと言っても元々はキッチン+小さなダイニング+バルコニーだったところを近年改装し、バルコニーを取り込んでひとまわり大きな部屋にした。ここで家族が食事をしてくつろぎ、お客様もここに通して一緒にお茶をしたり食事をしたりする。ダイニングテーブルの目の前にキッチンがあるので、お茶をいれるときも、食事の支度をするときも、みんなで楽しそうにおしゃべりしている。

 リビングに欠かせないのがテレビだが、マリナさんの家では、テレビはなんと冷蔵庫と電子レンジに挟まれた形で置かれている。ちなみに、洗濯機もキッチンに組み込むのがブルガリア流。壁ぎわにはソファも置かれ、犬もダイニングにやってきて座る。家族も家電もダイニングに全員集合しているのだ。

 今度は一戸建てに住むステフカさんの家を見てみよう。100年ぐらい前の家を改築して住んでいるが、ステフカさんの家もリビング兼ダイニング。遊びに行くと、キッチンカウンター手前のダイニングに通してくれる。中央に食卓があり、いつもかごに果物が盛られている。昔からの古い暖炉もあって冬も暖かく、仲の良い3人家族は食事をするのもおしゃべりをするのもここだ。

 ブルガリアには「トラペザリヤ」という古い言葉があり、食事をする部屋を意味する。元々は修道院で食堂をさした言葉だが、今ではマンションの間取りなどでダイニングをそのように呼ぶ。修道院ではトラペザリヤに修道士が集い、一緒に食事をするが、それはつまり歓談の場でもあるのだろう。ブルガリアではそんな伝統からも、食事をする部屋がリビングの役も兼ねているのかもしれない。







ページトップへ


「私は世界地図、日本はわきの下」 中東欧、占い脚光(1/3ページ)

2009年6月20日アサヒ・コム

世界地図を手に、地震が起きる場所と体の痛みとの関係を説明するマヤ・ポポーバさん=ソフィアで、玉川写す
パソコンを使って、受講者たちにホロスコープの見方を解説するコルチェマロシュ・マグダ教授(左手前)=ブダペストで、玉川写す

  

 深刻な金融危機の影響を受ける中東欧の国々で、予言や占いがにわかに脚光を浴びている。科学的な根拠はないが、ブルガリアでは体に感じる痛みで地震を予知するという女性が人気者に。ルーマニアやハンガリーでは占いに心のよりどころを求める人が後を絶たない。神秘的なものへの関心は、不安定な政情や経済危機に見舞われた人びとの心を映しているようだ。

■「痛みで地震予知」取材相次ぐ

 ブルガリアの首都ソフィアの主婦マヤ・ポポーバさん(53)は痛みを感じる体の部分で、近く地震が起きる場所を言い当てる。

 5月下旬に隣国マケドニアの地震を「予知した」という記事が地元紙に載って、一気に知名度が上がった。テレビ局が特番を企画。新聞やラジオからも取材が相次ぎ、夏休みの予定も立たないという。

 本当は、ポポーバさんの「予知」は今に始まったことではない。十数年前からバルカン半島の地震はもとより、阪神大震災(95年)、1万7千人超の死者を出したトルコ大地震(99年)などを「予知」した、と胸を張る。だが、今回ほど「大ブレーク」にはならなかった。

 バルカン半島の地震は、右太ももを中心に痛みを感じる。内側がトルコ、外側がギリシャ、中間がブルガリアといったぐあい。アジアは左腕に集中し、南北米大陸と台湾はなぜか同じ右腕だ。

 「私の体は世界地図みたいなの。日本は、ちょうど左のわきの下あたりよ」

 テレビ記者だった32年前、体中が焼けるような痛みに襲われた数日後、ソフィアで大きな地震が発生。痛みを感じるたびに各地の地震と照らし合わせていったという。

 「バルカン半島に限って言えば、かなりの的中率だ」。ブルガリア科学アカデミーのラングロフ博士(地震学)は驚くが、「科学的な裏付けは何もない」と断言する。





ページへ

ページトップへ


ブルガリアのヨーグルト復活 不況「安くて健康に良い」

2009年4月29日アサヒ・コム

家族で自家製ヨーグルトを味わうブラゴ・タタールスキーさん(右)=ブルガリア南部ラズログ、玉川写す

 ブルガリアでヨーグルトの生産・消費が回復している。東西冷戦終結や欧州連合(EU)加盟などを通じて食生活に変化が起きたが、金融危機以降の経済悪化のなか、安くて健康にも良い伝統食品・ヨーグルトが見直されているようだ。(ソフィア=玉川透)

 ブルガリアの首都ソフィアにある国営の乳製品加工会社LBブルガリカム社では、昨年のヨーグルトの売り上げが、前年のほぼ2倍に達した。乳酸菌の研究で世界的にも評価の高い同社製品はもともと定評があるが、今年に入って生産が注文に追いつかないという。

 「金融危機がヨーグルトを救うかも知れない」。ユンガレフ社長はそう話す。

 国内218社が加盟するブルガリア酪農協会の工場・一般家庭のヨーグルト生産量推計によると、90年代初め年30万トン以上あったヨーグルト生産は減り続け、03年には17万5千トンまで落ち込んだ。

 ブルガリアの地方には自家製のヨーグルトを大量につくる家庭がまだ多くある。南部の山村ラズログの農業、ブラゴ・タタールスキーさん(81)は4世代8人家族のために毎週7〜8キロのヨーグルトを作るが、ひと昔前に比べると食べる量は半分ほどになったという。

 ヨーグルトはブルガリアで「第2の主食」と呼ばれ、元来用途は広い。しかし、東西冷戦後の市場経済導入で西欧の食文化が流れ込むと、若者たちは甘みの強いフランスなどからの輸入ヨーグルトを少量食べるようになった。これも消費落ち込みの一因になったとみられている。

 これが08年には19万8千トンまで回復し、09年は21万トン台まで持ち直す勢いだという。協会では、家庭でヨーグルトを作る世帯の割合は07年まで全体の30%台だったが、08年以降は40%台に増えていると見ている。

 ヨーグルトのV字回復はなぜなのか。

 他の中東欧諸国と同様、ブルガリアも07年に欧州連合(EU)に加盟したことに伴って西欧などからの投資が増えた。黒海沿岸や高原のリゾートは英資本のホテルやアパートの建設ラッシュに沸いた。ところが、昨秋の金融危機後、外資の引き揚げが始まった。国家統計局によると、国内産業への投資額は今年、08年比で4割近く落ち込むと予測されている。好景気を反映して食生活も西欧化、高級志向に傾いていた一般家庭が、安価で栄養のあるヨーグルトに回帰した――。これがヨーグルト業界の一致した見方だ。業界は、若者のヨーグルト離れにも一定の歯止めがかかるのではないかとの期待している。

 業界の中には金融危機を「商機」ととらえ、乳酸菌に改良を加えて風味を増したり、整腸効果を高めたりと新たな事業展開をめざす動きも広がっているという

ページトップへ


ヨーグルト:生活に密着・ブルガリアを訪ねて 1人1日500グラム摂取

 食欲の落ちる夏には、口当たりがよく、栄養価の高いヨーグルトがぴったりだ。でも日本では「おやつやデザートに食べるぐらい」という人がほとんどかもしれない。ヨーグルトが生活の中にとけ込み、さまざまな料理に利用されているブルガリアを訪れた。【亀田早苗】

 ■琴欧洲関の実家へ

 ブルガリアの中央部に位置する古都ベリコタロノボから、ヒマワリ畑や小麦畑を越えて東へ約25キロ。ジュルニツァ村に並ぶ赤れんがの家々の中に、ひときわ目立つ家があった。ブルガリア国旗、昨年に加盟したEUの旗とともに、日章旗と力士の顔を染めた4本の旗が風になびく。

 琴欧洲関の実家だ。母ツェツァ・マハリャノバさん(47)に「大使館みたいですね」と言うと、「そのようなものね」と笑った。村でも相撲人気が高まっているらしい。

 父ステファン・マハリャノフさん(53)は琴欧洲関の少年時代を「近所の子どもたちのリーダーだったよ。皆でいつもここに集まっていた」と振り返る。料理も得意で、よく友達や家族のために腕をふるったという。

 ツェツァさんも料理上手だ。記者にヨーグルトを使った冷たいスープ「タラトール」と、琴欧洲関の好物「ズッキーニのヨーグルト添え」を教えてくれた。

 スープに使うキュウリやニンニクのみじん切りは、まな板を使わずナイフで縦横に切れ目を入れる。実に手際がいい。「何人分ですか?」。質問にステファンさんは「琴欧洲なら1人分」と笑う。普通なら2〜3人分はあるだろう。スープはヨーグルトの酸味にニンニクがアクセントになり、キュウリの食感が加わっておいしい。ズッキーニも素材の甘みがひきたつ。

 ■乳酸菌の効能

 ブルガリアのヨーグルトは、長寿で知られるスモーリャン地方でよく食べられ有名に。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は多くの種類があるが、ブルガリア菌とサーモフィラス菌を含むものが「ブルガリアヨーグルト」と定義される。乳酸菌は整腸作用や、免疫を高める作用などがあり、予防医学の観点からも注目されている。

 ブルガリアの伝統的な食生活は、乳製品と野菜が中心だ。そのためか、首都ソフィアを歩く若い女性は背が高くスリムな人が目立つ。中心部の市場には、色とりどりの野菜がぎっしり並んでいた。

 一方で、民主化やEU加盟により、西欧化が進み、生活は大きく変化してきた。伝統的食文化は崩れ、1人1日約500グラムに上るヨーグルト摂取量は減っているといわれる。

 ソフィアの内科医、ギオルギ・ガイドルコフさんは高血圧や糖尿病、肥満などに、ヨーグルトと野菜や果物によるダイエットを指導している。「食事に気をつければ、高血圧や貧血、高コレステロールは改善できる」と効果を強調する。

 ヨーグルトが苦手な人のために、フルーツ入りのものも売られるようになったが、甘みを足さない食べ方が一般的なようだ。プレーンヨーグルトを水で薄めた冷たい飲み物「アイリャン」も酸味がさわやか。一見、牛乳のようだが、牛乳が苦手でもおなかをこわす心配がなく、おすすめだ。

==============

 ◇肉を軟らかくする効果も

 ヨーグルトは、肉を軟らかくする効果がある。リゾート地・ヒサールの人気レストラン「ナツィオナル」で、ヨーグルトを使った「豚肉のステーキ」を習った。レシピは1人分だが、2人ぐらいで食べられそうな分量だ。

 《主な材料》

▽ステーキ用豚肉   250グラム

▽プレーンヨーグルト 大さじ3

 《作り方》

<1>ヨーグルトは同量の水でのばし、肉を漬け込み30分置く。

<2>肉を焼く。こげやすいので気をつけながら、両側から火を通す。

<3>ソースを作る。マヨネーズとヨーグルトを1対2の割合で適量混ぜ、塩、こしょう、カレー粉を各少々加えて、(2)にかける。

==============

 ★タラトール

 《主な材料》(2〜3人分)

▽プレーンヨーグルト         400グラム

▽キュウリ              1本

▽ニンニク              3片

▽ディル(なければイタリアンパセリ) 適量

▽塩                 小さじ1

▽オリーブ油             適量

 《作り方》

<1>キュウリとニンニクを5ミリ角ぐらいに切る。ディルも細かく切る。

<2>(1)に塩とヨーグルト、オリーブ油を入れて混ぜる。

<4>水100CCを入れて混ぜる。濃いようなら適宜、水を足す。

==============

 ★ズッキーニのヨーグルト添え

 《主な材料》(2人分)

▽プレーンヨーグルト 100グラム

▽ズッキーニ     1本

▽ニンニク      1片

▽ディル       適量

 《作り方》

<1>ズッキーニは皮がついたまま薄く切って揚げる。好みで塩をふる。

<2>(1)を並べた上にヨーグルトとみじん切りにしたニンニクをのせ、切ったディルを飾る。

毎日新聞 2008年8月12日 東京朝刊


美人と長寿を生む 伝統のヨーグルト

2008.8.5

【Bon Voyage!】山の斜面に家々が建ち並ぶロドピ地方。牛を飼い、自家菜園で野菜や豆を作る自給自足に近い食生活が今も送られている=6月中旬、ブルガリア(飯田英男撮影)

 言わずと知れた「ヨーグルトの国」は、食べる量も日本の比ではない。そのためか、街ではツヤツヤ肌の美人が目を引くし、田舎には元気なお年寄りが多い。いまなお、手作りのヨーグルトを“常食”する「長寿村」に足を延ばし、伝統とぬくもりを感じるブルガリアの食を体験した。

 ■お肌ツヤツヤ おなかの中もキレイに

 首都ソフィアの目抜き通りを歩くと、何軒かの米国ファストフードチェーン店に出くわし、スーパーに並ぶヨーグルト製品は国外ブランドが幅を利かせていた。民主化から約20年がたち、都市では人々の食生活も変わりつつあるようだ。

 ブルガリアならではの伝統料理を求めて、ソフィアから南のギリシャ国境を目指した。山道を車に揺られること約3時間。四方を山に囲まれた雄大な自然のパノラマに、車を降りて、まず深呼吸をした。

 ロドピ地方は長寿者が多い「長寿村」として知られ、ほとんどの家庭では牛を飼い、自家菜園で作った野菜で食をまかなっている。

 モムチロフツィ村に住む、ストヨ・カラマノレフさん(77)のお宅を訪ねると、妻のヨルダンカさん(68)があいさつ代わりに手作りヨーグルトをすすめてくれた。

【Bon Voyage!】ロドピ地方のチョクマノヴォ村に住む、マリア・サヴォヴァさんはまもなく100歳を迎える。新聞を読んだり、織物や編み物をするのが日課だ=6月中旬、ブルガリア(飯田英男撮影)

 コクのあるクリーミーな味わいで独特の酸味がある。ブルガリア語でヨーグルトは「キセロ・ムリャコ」、“すっぱい乳”を意味する。この独特な酸味がブルガリアヨーグルトの特徴だ。

 ヨルダンカさんは、豪快におかわりを盛りながら、優しい笑顔で「サクランボのジャムをかけてどうぞ。これも私が作ったの」。フルーティーな甘みが加わり、いよいよスプーンが止まらなくなった。

      ■□■

 おばあちゃんのヨーグルト作りは、自宅で飼う2頭の牛の乳搾りから始まる。

 人肌に温めて、残りのヨーグルトを「種菌」として1さじ加える。容器ごと保温用の布にくるんで置いておけば発酵がすすみ、翌朝にはヨーグルトができている。牛乳以外にも、ヤギや羊の乳で作る家庭も多い。

 ヨーグルトは料理にもふんだんに使われていた。水でのばして冷製スープのタラトルに、ズッキーニの揚げ物にはソースとして、そして、スナック感覚のバニッツァには、日本の「みそ」のように風味付けに…。バターやクリームの代わりに、ヨーグルトやチーズを使うのがブルガリア料理のまさに“みそ”。

 街のレストランでは、ヨーグルト同様、シレネと呼ばれる白いチーズをよく口にした。ほとんどの店のメニューにある「ショプスカサラダ」は、生のキュウリと

【Bon Voyage!】「長寿村」として有名なロドピ地方は、元気なお年寄りが多い。「90歳以上が442人、うち44人は100歳以上ですが、介護が必要な人は全体の6%に過ぎない」と地元の医師が教えてくれた=6月18日、ブルガリア(飯田英男撮影)

トマトに、おろしたシレネをドレッシング代わりにたっぷりかける。細かく刻んだ野菜に卵とシレネを混ぜていり煮にした「ミシュマシュ」は、まろやかで飽きがこない味だ。

 意外だったのは、日本人以上に野菜をたくさん食べること。普通のレストランでも、サラダのメニューはなんと30種類以上。ブルガリア料理の代表格である煮込み料理「カヴァルマ」にもナス、ジャガイモなど野菜がゴロゴロと入っていた。

 ヨーグルト+野菜=“快腸”。ブルガリアの食の魅力は、舌のみならず「おなかの中」にもあった。

 《手軽に作れるヨーグルトメニュー》

 【タラトル】

 ヨーグルトの冷製スープで夏にぴったりの一品。すべての材料をよく混ぜ合わせて、塩、オリーブ油で調味する。

 [材料](4人分)

プレーンヨーグルト   500グラム

【Bon Voyage!】ヨルダンカおばあちゃんの手によるブルガリアの伝統料理。中央がヨーグルトをソース代わりに添えたズッキーニの揚げ物、右奥から時計回りに、手作りヨーグルト、サクランボのジャム、一口サイズのロールキャベツ「サルミ」、ヨーグルトスープ「タラトル」、朝食やおやつに食べる「バニッツァ」、自家製チーズ。自宅で飼う牛の乳で手作りしたヨーグルトとチーズは新鮮そのもの=6月中旬、ブルガリア・ロドピ地方(飯田英男撮影)

刻んだクルミ      25グラム

キュウリのみじん切り  3本分

おろしニンニク     1〜3かけ分

ディルのみじん切り   適量

水           250ミリリットル

塩、オリーブ油     各適量

 【アイリャン】

 冷たいヨーグルトドリンク。プレーンヨーグルトを同量の水で割るだけでOK。

【旅のメモ】

 ■ブルガリア料理専門店 日本でブルガリア料理を味わいたい人には、レストラン「ソフィア」(東京都港区東新橋1の8の2 カレッタ汐留B2、(電)03・3571・0141)がおすすめ。ショプスカサラダやカヴァルマなど伝統的なメニューに加え、日本人向けにアレンジしたメニューやオリジナル料理も多彩。ブルガリアワインやラキア(アルコール度数40%の蒸留酒)をじっくり味わい、かの地に思いをはせてみては? ヨーグルトバーでは、ヘルシーな野菜を使ったトッピングのヨーグルトやアイリャンなどが女性に人気だ。

       ◇

※Bon Voyage(ボン ボヤージュ)はフランス語で「よい旅を」の意味です。

ページトップへ

【ヨーグルトと生きる】1000種の乳酸菌が静かに眠る

2008.7.9

LBブルガリカム社の研究開発センター。約1000種類の乳酸菌コレクションを活用するため、日本のバイオテクノロジーを駆使した技術支援も行われた=ブルガリア・ソフィア市内(飯田英男撮影)
LBブルガリカム社の研究開発センター。約1000種類の乳酸菌コレクションを活用するため、日本のバイオテクノロジーを駆使した技術支援も行われた=ブルガリア・ソフィア市内(飯田英男撮影)

 ヨーグルトは、牛やヤギなどの乳を乳酸菌で発酵させて作るのはいうまでもない。国営のヨーグルトメーカー、LBブルガリカム社は、ヨーグルト用の乳酸菌を世界各国に輸出しているほか、豊富な乳酸菌の収集も行っている。

 首都ソフィア市内の研究開発センターには、約1000種類というブルガリア一のコレクションを誇る乳酸菌が静かに眠っていた。あるものは乾燥され、あるものはマイナス196度で凍結されて…。これらは国内の山岳・森林地帯などから採取された、自然に生息する乳酸菌で、「ブルガリアの気候風土がはぐくんだたまもの」と同センターのツォナ・ステファノヴァ所長は胸を張る。

 乳酸菌の保存・研究にも力を注ぐ同社では、日本製の保菌庫や電子計量器などが目立つ。これは、1997年から5年間、国際協力事業団(JICA、現・国際協力機構)が乳酸菌のコレクションを活用しようと技術支援を行ったためだ。

 ヨーグルトの味や香り、固さは原料となる乳の質、製法にも関係するが、「(国際規格で決められている)ブルガリア菌とサーモフィラス菌の組み合わせによって変わってくる」と、ステファノヴァ所長。国によって好みはさまざまで、それに応じて現在は10通り以上の組み合わせがある。とはいえ、実際にヨーグルトに使われているのは20種類程度だとか。未知の乳酸菌によって将来、思いもよらないヨーグルトができるかもしれない。

ページトップへ


キッチンはバルコニーに

2008年04月30日アサヒ・コム

ブルガリア・早坂由美子 きちんとキッチン

 

 ブルガリアのキッチンは、家の内と外に分割されていることがよくある。どういうことかというと、通常のキッチンが家の中にあるのはもちろん、さらにバルコニーの一角にもオーブンや電気コンロなどの調理設備が置かれているのだ。ブルガリアで知人宅を訪れると、わかっていても慣れるまではその位置関係に戸惑う。

写真
バルコニーの奥にコンロとオーブンがある
写真
反対側には洗濯物とパプリカの詰まった箱
写真
家の中のキッチン
写真
集合住宅のバルコニー、ガラス張りが多い

 キッチンにバルコニーが併設されているのが一般的な間取りで、魚を焼く時など、匂いや煙の強い調理になるとバルコニーのコンロを使うようだ。日本人が縁側に出て七輪で秋刀魚を焼くのを想像すると感覚としては何となくわかるのだが、日本の場合はそのときだけのこと。ところが、ブルガリアではそれが常設、かつ頻繁に使うものになっている。揚げ物などもフリッター(炊飯器のような形をした揚げ物専用の電気調理器)をバルコニーに置いている。シンクは内側のキッチンにのみついていることが多く、普通の調理は内側のキッチンでしているようだ。


 この国の伝統的な民家の上階には、「チャルダック」と呼ばれる空間がある。地方によって呼び方は多少異なるが、屋根のある広いバルコニーを想像してもらえればいいと思う。チャルダックは、家事、ちょっとした作業、食事、くつろぎなどオールマイティーに使われる、日本の土間や縁側にも似た雰囲気を持つ空間。近代的な集合住宅にもチャルダック風のバルコニーがあり、それがキッチンとつながっている。


 さらにチャルダックやバルコニーの側面をガラス窓で覆って温室のようにし、料理をする時だけその窓を開けている家もよくある。料理をしないときは洗濯物を干してバルコニー風に使うなど、個人が思うままに使う自由自在の空間だ。


 ブルガリアの街を歩けば、必然的にたくさんのチャルダックとバルコニーを目にすることになる。冷蔵庫まで置いてあったり、カーテンがかけてあったり。料理をしている人や、そこで食事をしている人、おしゃべりをしている人、特に夕方は灯りのついたバルコニーがよく賑わっているのが見える。


 友人がブルガリアを訪ねて来たときに、やはりチャルダック風バルコニーのある一軒家に数日、間借りをしたことがある。バルコニーには調理設備の他に小さなダイニングセットがあり、眺めの良いバルコニーでとる食事はとても気持ちが良かった。少し離れて洗濯物が干してあり、パプリカを積んだ箱が置いてあった。青空を見ながら、風に吹かれて料理をするのもなかなか素敵なものだ。








ページトップへ 目次ページへ